内縁関係の夫と別れた場合、財産分与や慰謝料を請求できますか?
内縁関係の夫と別れた場合、財産分与や慰謝料を請求できますか?
次のような事例を考えてみましょう。
長年内縁関係にあった夫が別の女性と同棲するようになりました。
別れた場合、財産分与や慰謝料の請求はできるでしょうか。
内縁関係とは
内縁関係であっても法律上の夫婦に近い保護がなされるので、財産分与や慰謝料の請求はできます。
生活を共にし、外見的には夫婦のように暮らしていても、結婚するという意思がない場合「同棲」です。
また、夫婦同然に生活して結婚の意思もあるものの、婚姻届は出していないという場合は「内縁」となります。
たとえば、すでに誰かと婚姻届を出している状態だが、別の誰かと結婚するつもりで同棲しているというケ-スも内縁関係にあたります。
これを重婚的内縁関係といいます。
内縁の場合、相続権がないなど原則として婚姻としての法律の保護を受けることはできないのですが、内縁関係を解消するときには財産分与や慰謝料を請求することが可能です。
婚姻関係の場合と全く同じというわけではありませんが、準婚関係といって、内縁関係でも結婚に準じた扱いがなされ、婚姻に関する民法の規定が類推適用されます。
内縁関係だからといって家にお金を入れなかったりすれば、協力扶助義務違反となるのです。
もちろん、貞操の義務もあるわけですから、身勝手な不貞をはたらけば、通常の婚姻と同様、慰謝料を請求されることになります。
しかし、「結婚する意思」や「夫婦同然の生活」は、はっきりした線引きが難しいところで、場合によっては、内縁の関係は、同棲や単なる共同生活とも解釈されてしまいます。
内縁の場合は、通常の夫婦の離婚のようにはいかないのが現実です。
調停では財産分与や慰謝料の額を決めてもらえる
たとえば離婚調停(内縁関係調整)では、両者が調停でうまく合意し、調停が成立すれば、裁判所側が調停調書を作成します。
基本的には、裁判所(調停委員)側か財産分与や慰謝料について一方的に決めてしまうことはありませんが、当事者双方が同意すれば、調停で慰謝料や財産分与を決めてもらうこともできます。
もし、合意に至らずに、調停が不成立となった場合は、家庭裁判所の職権によって審判に付されることもあります。
そしてこの審判において、財産分与、慰謝料について決めることもあります。
その後2週間以内に当事者が異議申立てをしないと、審判の内容が確定してしまいますが、異議申立てがあった場合は、その審判は効力を失い、さらに解決を求めて訴訟を提起することになります。
財産分与・慰謝料の変更は認められるのか
離婚(内縁関係解消)後に、離婚時と状況が変わったからといって財産分与や慰謝料について変更を認めてもらうのは難しいでしょう。
ただし、相手が不倫をしていたことを隠していたり、無理やり念書を書かされたという場合には、一定期間内であれば慰謝料請求や財産分与のやり直しが認められる可能性があります。