仕事も家事もしない夫に離婚を請求できますか?
仕事も家事もしない夫に離婚を請求できるのでしょうか。
次のような事例を考えてみましょう。
私の夫はこらえ性がなく、結婚後もいくつもの職場を転々としてきました。
1年前には「俺は働くことに向いていない」と言い出し、以降全く働こうとしません。
わずかな貯金も底をつき、仕方なく実家に子どもを預けて私か働きに出ていますが、夫は私の留守中家事をするでもなく、だらだらと過ごしているようです。
私もほとほと愛想がつきたので離婚したいのですが、認められるでしょうか。
夫婦の義務
夫婦には、「同居し、互いに協力し、扶助する」義務があります(民法752条)。
ただ、経済的な面を夫が、家庭面を妻が担当すると決まっているわけではありません。
夫婦で話し合いをした結果、妻が外で働き夫が家事を担当するということにしたのであれば、夫が働かなくても構わないわけです。
しかし、今回のケ-スでは夫は家事に協力する様子もなく、子どもについても妻の実家に面倒をみてもらわなければならない状態のようですから、到底義務を果たしているとは言えません。
この点を裁判所できちんと主張すれば、離婚を認められる可能性はあるでしょう。
離婚事由は?
裁判離婚の要件は、(1)配偶者に不貞の行為があったとき、(2)配偶者に悪意で遺棄されたとき、(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき、(4)配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき、(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき、と限定されています。
この場合、離婚理由として主張できるのは「悪意の遺棄」(民法770条1項2号)です。
悪意の遺棄は、夫婦の一方が正当な理由もなく家族を置いて出て行ってしまう、というような行為のほか、病気など正当な理由もないのに就職をしない、家庭の維持のために何の努力もしない状態が1年以上も続いているというように、一方的に相互扶助義務を放棄している場合にも認められます。
調停などで話し合いをしていくうちに、夫に就職先を見つけてくるなどの行動が認められれば話は別ですが、再三の要求にもかかわらず、夫婦関係の改善に向けた具体的な努力が見られないのであれば離婚できるでしょう。