近年、夫や妻が亡くなった後、配偶者側の親族(姻族)との関係を法的に解消する姻族関係終了届を提出する人が増えています。
3親等以内の姻族は民法上の親族で扶養義務などが生じますが、届け出れば離婚と同様、親族関係がなくなります。
これを死後離婚といいます。
法務省の戸籍統計によると、同届の提出数は2006年度の1854件から2015年度には2783件に増えました。
自治体窓口に配偶者の死亡を証明する戸籍謄本などを持参し、書類に押印するだけで手続きは完了します。
親族側は拒否することができず、通知もされません。
戸籍上の手続きのため、遺産相続や遺族年金の受給には影響しません。
また、復氏届を提出することで戸籍を旧姓に戻すこともできます。
以下、詳細、説明します。
死後離婚とは
死後離婚とは言いますが、法的には、死後に夫又は妻と離婚することはできません。
なぜなら、夫婦の婚姻関係は、配偶者の死亡によって既に終了しているからです。
死後離婚とは、正式には配偶者の死後「姻族関係終了届」を市区町村役場に提出することで、配偶者の親族との法的関係を断つことを言います。
姻族関係終了届の提出により、配偶者(夫又は妻)と死別した人は、姻族との関係を終了させることができます。
姻族とは、具体的には、配偶者の両親や兄弟姉妹等を言います。
つまり、義父母や義理の兄弟姉妹等と他人に戻る目的で行われるのが、いわゆる死後離婚であると言ってよいでしょう。
なお、姻族関係終了届を提出しても、亡き配偶者と戸籍が別になるわけではありません。
戸籍も別にして、婚姻前の氏(旧姓)に戻りたい場合は、市区町村役場に復氏届を提出する必要があります。
死後離婚の手続き
死後離婚とは、姻族関係終了届を市区町村役場に提出する手続きです。
姻族関係終了届を本籍地又は住所地の市区町村役場に提出します。
その際必要なものは、届出者の印鑑及び本人確認書類(運転免許証など)です。
また、本籍地以外の市区町村役場に届け出る場合には、配偶者の死亡の事実及び生存配偶者の確認が取れる戸籍謄本も必要となります。
なお、姻族関係終了届を提出するにあたって姻族の承諾は不要です。
親族側は拒否することができず、通知もされません。
死後離婚を選ぶ意味
姻族関係が継続していても、姻族との同居義務があるわけでもないため、通常は姻族関係をあえて終了させる必要性はないようにも考えられます。
但し、夫又は妻が亡くなった後、姻族関係が継続する場合には、義父母や義理の兄弟姉妹等の扶養義務を負う可能性があります(民法877条)。
そこで、扶養義務を負う可能性を無くしたい場合には、死後離婚を選択する意味があります。
姻族に対しては、特別な事情がない限り扶養義務は生じないのですが、慣習により姻族の介護を求められることを懸念するケースや、確執のある義母や生前不仲だった夫と同じ墓に入りたくないなどのケースがあると考えられています。
手続きに姻族の承認は不要で、通知されることもありません。
また、離婚と異なり配偶者の遺産の相続権や遺族年金の受給には問題がありません。
死後離婚は、ひとつには配偶者の親族との縁切りを意味する制度と考えることもできるかもしれません。
なお、死後離婚を選んだとしても、子どもと義父母との関係は、祖父母と孫という血族であることに変わりはありません。
※ 民法 第877条
(扶養義務者)
第877条 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
2 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、3親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
3 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。