不貞慰謝料は肉体関係がないと認められないか?

不貞行為の慰謝料では、まず、不貞行為に該当するかどうかという点が問題となります。

「不貞行為」とは具体的にどのような行為を指すのかを確認する必要があります。

この記事では、慰謝料請求の原因となる不貞行為の内容を解説します。

1.不貞行為とは?

不貞行為とは、「不貞慰謝料請求事件に関する実務上の諸問題」(判例タイムズNo.1278・45頁以下)によれば、以下の3つであると解されます。

・ 性交又は性交類似行為

・ 同棲

・ 上記の他、一方配偶者の立場に置かれた通常人の立場を基準として、一方配偶者・他方配偶者の婚姻を破綻に至らせる蓋然性のある異性との交流・接触

2.肉体関係がないと不貞慰謝料は認められないか?

上記文献によれば、「そもそも、「不貞」が不法行為とされるのは、婚姻共同生活の平和の維持という権利又は法的保護に値する利益を侵害するからである。・・・とすれば・・・「不貞」を肉体関係に限定する必要はなく、類型的に婚姻共同生活の平和を侵害する蓋然性がある行為かどうかを基準とすべきである。」と説明されています。

このように、慰謝料請求原因となる「不貞」は、性交に限定されず、それよりも広い概念であるということができるでしょう。

肉体関係を持ったことは不貞行為に該当することは明らかですが、肉体関係を有するまでに至らない場合であっても、「不貞行為」に該当することがありうるといえます。

この点、参考となる裁判例として、以下の事例が挙げられます。

2-1.東京簡裁平成15年3月25日判決

「2 ところで、第三者が婚姻当事者の一方と緊密な関係になったことによって、他方の配偶者が精神的苦痛を被った場合について、次の最高裁判所の判例がある。「夫婦の一方の配偶者と肉体関係を持った第三者は、故意又は過失がある限り、右配偶者を誘惑するなどして肉体関係を持つに至らせたかどうか、両名の関係が自然の愛情によって生じたかどうかにかかわらず、他方の配偶者の夫又は妻としての権利を侵害し、その行為は違法性を帯び、右他方の配偶者の被った精神上の苦痛を慰謝すべき義務があるというべきである。」(最判昭和54年3月30日民集33巻2号303頁)。

3 そこで、この判例にしたがって考察すると、被告とAとの間に肉体関係があったことを認めるに足りる証拠はないが、被告とAとの交際の程度は、数万円もするプレゼントを交換するとか、2人だけで大阪まで旅行するなど、思慮分別の十分であるべき年齢及び社会的地位にある男女の交際としては、明らかに社会的妥当性の範囲を逸脱するものであると言わざるを得ず、恋愛感情の吐露と見られる手紙を読んだ原告が、被告とAとの不倫を疑ったことは無理からぬところである。被告のこれらの行為が、原告とAとの夫婦生活の平穏を害し原告に精神的苦痛を与えたことは明白であるから、被告は原告に対し不法行為責任を免れるものではない。しかしながら、本来、夫婦は互いに独立した人格であって、平穏な夫婦生活は夫婦相互の自発的な意思と協力によって維持されるべきものであるから、不倫の問題も、基本的には原告とAとの夫婦間の問題として処理すべきものと考えられる。したがって、被告とAとの交際が上記の程度であっ て、その期間も約半年に過ぎないこと、被告もAも○○委員を辞任するという一種の社会的制裁を受けていること、原告とAとの婚姻関係は最終的には破綻することなく維持されていること等の事情を勘案すると、本件において、被告の行為によって原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料としては、10万円が相当と考えられる。」

と判示しています。

2-2.東京地裁平成17年11月15日判決

「以上の認定事実によると、被告Y1は、Aと肉体関係を結んだとまでは認められないものの、互いに結婚することを希望してAと交際したうえ、周囲の説得を排して、Aとともに、原告に対し、Aと結婚させてほしい旨懇願し続け、その結果、原告とAとは別居し、まもなく原告とAが離婚するに至ったものと認められるから、被告Y1のこのような行為は、原告の婚姻生活を破壊したものとして違法の評価を免れず、不法行為を構成するものというべきである(最高裁三小平成8年3月2 6日判決・民集50巻4号993頁、同判例解説参照)。

被告Y1は、Aと肉体関係を結んだことが立証されてない以上、被告Y1の行為について不法行為が成立する余地はない旨主張するけれども、婚姻関係にある配偶者と第三者との関わり合いが不法行為となるか否かは、一方配偶者の他方配偶者に対する守操請求権の保護というよりも、婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益を保護するという見地から検討されるべきであり、第三者が配偶者の相手配偶者との婚姻共同生活を破壊したと評価されれば違法たり得るのであって、第三者が相手配偶者と肉体関係を結んだことが違法性を認めるための絶対的要件とはいえないと解するのが相当であるから、被告Y1の主張は採用することができない。」

と判示しています。

かかる判示からすれば、肉体関係(性行為)以外であっても、婚姻共同生活を破綻に至らせる蓋然性のある行為も加害行為となりうるといえます。

2-3.東京地裁平成20年12月5日判決

「(1)Aの証言、被告本人尋問の結果、陳述書(乙3)、上記第2の2の各事実によれば、被告は、Aとの間で、婚姻を約束して交際し、Aに対し、原告との別居及び離婚を要求し、キスをしたことが認められ、これらの事実は、少なくとも、Aの離婚原因となる民法770条1項5号の「婚姻を継続し難い重大な事由」の発生に加担したものということができ、原告に対する不法行為を構成するというべきである。

(2)もっとも、原告は、被告がAと不貞行為、特に、性的肉体的交渉があった旨の主張をする。

そこで検討するに、まず、メールの内容自体のみから、性的肉体的交渉があったと断定することはできず、また、風呂の写真については、その撮影日付が不明瞭であるほか、正確に日付がなされたのかどうかの点についても不明であり、原告が当該写真を発見した時期を裏付けるものとしては、同人記載のメモ(甲9の1、2)のほかには存在せず、ホテルの件についても、同泊したとまでは断定できない。

したがって、原告の指摘する点については、性的肉体的交渉が存在したのではないかと疑われる事情であり、かつ、証人E及びAの証言は信用できないとしても、いまだ、その存在を断定することができない。

(3)以上により、性的肉体的交渉自体は認められないが、その余の事実は不法行為を構成するものと認める。」

と判示しています。

2-4.東京地裁平成22年12月21日判決

「継続的な肉体関係がなくとも、第三者の一方配偶者に対する行為が、他方配偶者の婚姻共同生活の平和を毀損するものであれば、違法性を有するというべきである。」

と判示しています。

かかる判示からも、肉体関係(性行為)以外であっても、加害行為となりうるといえます。

以上の参考裁判例からも、不法行為の対象となる不貞行為とは、肉体関係に限られないと考えられます。

3.まとめ

実務上、不貞行為の有無が問題となる場合には、肉体関係の有無が第一義的に争われることになりますが、仮に肉体関係の存在が立証できなかったとしても、その他の行為が不貞行為に該当すると判断される可能性があります。

したがって、不貞行為の有無が争点となる場合には、関連裁判例も調査した上で、慎重に検討する必要があります。

裁判は、時間と費用がかかり、負担が大きいので、証拠関係を精査し、訴訟提起した場合の勝敗、金額の見込み等を十分に吟味して判断する必要があります。

具体的な主張・立証にあたって不明な点がある方は、お気軽にご相談ください。

 

 

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